月風車

個人運営のサイトです。版権モノのイラストや小説を展示しています。オリジナル小説も有り。BL、801等入っております。この単語に聞き覚えのない方回れ右!

桜坂 噂と中傷

 「碇君・・・・・」
 机に突っ伏しているだけのつもりが、いつの間にか眠ってしまっていた自分の背中を誰かが揺すって来た。
 「碇君」
 今度は口調が少々強くなり、背中も半ば強く揺すられる。
 自分はそこでようやく目を覚ましたが、目を開けた先に綾波の顔が飛び込んできて、ガバッと音を立てて跳ね起きた。
 「お昼、もう食べた?」
 寝癖がしっかりついて、寝顔をばっちりと見られたことに慌てふためいているシンジを、綾波は口元に微笑を浮かべながら見つめていた。無論、綾波のその微笑は周りの人間からすれば限りなく無表情に近く見えるに違いない。
 シンジは寝癖を少々マシな状態にすると、綾波の方を見た。綾波はコンビニの袋を二つ、片手にぶら下げていた。
 「これ、碇君の」
 そう言うと、袋のうちの一つをシンジに差し出してきた。中には野菜ジュースとパンが入っていた。
 シンジは綾波と教室を出ると、本来なら立ち入り禁止である屋上の方へと向かった。時分は昼休みだったが、誰も人は居なかった。白い床を踏み出す綾波に、シンジは、青い空から降り注ぐ光に目を細めながら続いた。
 「あの、ありがとう。綾波・・・・」
 腰を落ち着かせると、シンジはようやく礼を述べることが出来た。
 「気にしないで。」
 綾波はそういうと、袋からパンを取り出して開封した。どうやら、袋の中身はシンジに渡したものと全く同じものらしい。シンジもパンを食べ始めた。
 本来、シンジと綾波は別クラスである。シンジは選抜の文系クラスで、綾波は選抜の理系クラスである。シンジは、別クラスの綾波がわざわざ昼休みに自分を起こしに来たことと、昼ごはんを用意してくれていたことに、内心驚きを隠せなかった。シンジは考えているうちに、自分の手にしていたかじり掛けのパンをぼうっと見つめていた。
 「ごめんなさい。料理、得意じゃないの」
 シンジのそんな様子を見ていた綾波がそんな返答を寄越した。シンジは慌てて違うよ、と首を振った。
 「そういう意味じゃないんだっ・・・・その、後でお昼代払うから。」
 綾波は、わたわたと慌てているシンジを無言で数瞬、見詰めていたが、またパンをかじり始めた。

 「ちょっとね、大変な目に遭ってるんじゃないかと思ったの」
 パンを食べ終わり、ジュースを飲みながら一服していると、綾波が空を仰ぎながら呟いた。真紅の瞳にうっすらと青い空が映し出される。シンジはつられて空を見上げて、入学式から今日までの怒涛の数日間を思い出した。
 受験、推薦、一切の関門を通らないでトップクラスへの合格が決まっていた自分の噂は、教師や教育委員会関連の人たちが情報規制をしたにも関わらず、広がっていた。人の口に門は立てられない、とは正にその事だった。
 入学式の後、クラスに入った自分を待ち受けていたのは、クラスメイトの刺さるような視線だった。
 それでも、その視線に怖気づかないように、気に留めない振りをして番号順に指定された席に座るのが精一杯だった。自分の動作を目聡く観察される心地は、不愉快そのものである。入学式初日にしては、雰囲気が好ましくない状態であった。寧ろ、これからの危機を感じさせられる。
 今日で入学してから三日目を迎えるわけであるが、シンジはたったその数日間のうちに自分から行動に出るのが、億劫になった。昼食をとる、図書館や別教室に行く、という自然な行動すらも沈黙と共に見詰められる。勿論、何もしなくても四六時中周りから見られることに変わりはない。
 そんな事もあって、昨日までは昼食をとらない生活が続いていたのだ。綾波がシンジのその様な状況をどうやって知ったのかは解らないが、彼女のさりげない気遣いがとてもありがたく思える。
 「大丈夫だよ。何とか」
 シンジは青空を見ながら呟いた。綾波が視線を向けてくるのがわかる。何の痞えもなく、自然に発せられた言葉。
 「・・・・そうね」
 何を思ったかは汲み取れなかったが、綾波がシンジの言葉にそっと添えるように呟いた。
 お互いに無言で、無限に広がる青い空を見詰めていた。柔らかな風が、桜の香りが、二人で共有する時間がこの上なく愛おしくさえ感じられた。
 芽吹く季節を運んでくるのであろう青い空には、白い柔らかな雲が流れていた。
桜坂 封書

 ここ数年、音沙汰の無かった父から急に手紙が届いた。受験を控えた冬に、何の報せもなくやってきた一通の手紙。読みたいが、気が進まない。それでも、まるで怖いもの見たさのような妙な気分で封を切った。
 封筒に入っていたのは、一枚の上質なやや厚めの紙だった。丁寧に折りたたまれたそれを開くとシンジの目に信じられない文字が飛び込んできた。
 『合格通知書』
 俄かに己の目を疑った。だが、何度と見直してもそう記してあった。通知書の下の合格者の欄には自分の名前、承認者には父の名が載っていた。父は有数のエリート校であるネルフ学園の理事長を務めている。
 シンジはその封書を半ば鷲掴みにすると、寮を出て中学の教職員室へと急いだ。門限が過ぎているがこの時間帯ならあの教員が残っているであろうと思ったからだ。
 思惑通り、学校の門限はとうに過ぎているのに職員室の一角で仄かに明るいところがあった。
 「加持先生!!」
 シンジは勢い良くドアを開けた。誰もいない暗い廊下に音が残響する。広い部屋の一角で蛍光灯が一本灯されている所に、少々無精髭を生やしているが年端の若い男がいた。
 「碇か?こんな時間にどうした。」
 本来禁煙の場所であるが、他に誰もいないので煙草を吸っていたのであろう。シンジが入ってくると灰皿に押し付けた。
 「先生!これを・・・・」
 シンジは肩で息をしていた。声も半ばかすれている。兼ねて落ち着き払っているこの子がこんなに慌てるとは・・・・。加持は、訝しげにシンジの持ってきた封書を受け取った。力を入れて握り締められたのか、クシャクシャになっていた。
  中に入っていた通知書のシワを丁寧に引き伸ばして開いた。合格通知書と書かれたそれを加持は無言で見詰めていた。
 「寮に帰ったら、僕宛に父から手紙が届いてたんです・・・・」
 ネルフ学園の入試はまだ始まっていない。推薦ですらこの前から申し込みと受付が始まったばかりである。所がシンジ宛に合格通知書が届いたと言う事は、シンジはエリート校に一切の試験を受けずして入学することになる。
 (どうしたことやら・・・・・)
 事が些か早急すぎる。周りからの非難は絶対に逃れられないだろう。ましてや、シンジは音楽専門の高校に通いたいと加持に相談を持ちかけていた。その経緯を知っているとなれば、尚のこと事実を伝えるのは酷な事だった。
 加持は背もたれにもたれなおして大きく伸びをした。
 「先生は、驚かないんですね・・・・・」
 加持はまぁな、とシンジに通知書を返した。
 「実はな、今朝方ネルフ学園から連絡があってな・・・・。」
 シンジがハッと顔を上げた。眼が見開かれ動揺しているのが分かる。
 「君が想像している通りだよ。勿論、我々の方としても早急に会議を開いて話し合ったさ。結果、君の優秀さはネルフ学園に通うものとして値する、と議決されたワケさ。」
 加持の話が終わるとシンジは重々しく口を開いた。
 「連絡を寄越したのは父でしたか・・・・?」
 「いいや、教頭の冬月さんからだったらしい。」
 「そう、ですか・・・」
 シンジは力なく呟いた。加持は時計を見遣った。そろそろ校内を出なければならない。
 「おい、碇。」
 シンジが今度は何ですか、とでも言いたげな表情で顔を上げた。
 「もう晩飯は食べたのか?」
 加持は椅子から立ち上がり、壁に掛けてあった外套を羽織った。春とはいえ、夜は寒い。
 「まだですけれど・・・・」
 加持はシンジの肩に手を回して職員室を後にした。
 「外は寒いから、お前はいったん寮に戻ってコートでも取って来い。バレないようにな。」
 シンジはハイ・・・と寮に戻ろうとしたが、後ろで加持が携帯を取り出して何処かに電話を入れた。
 「おー、レイか?」
 シンジはピタッと足を止めた。そして勢いよく加持の方を振り返った。
 「今夜空いてるか?・・・・あぁ、じゃ、今から出てくれ。」
 加地は口をパクパクさせて驚いているシンジを無視して集合場所や時間などをレイに伝える。
 「その時間には迎えに来るからな。じゃあな」
 加持はそう伝えると、ピッと携帯を切った。
 「な、な何で綾波も呼ぶんですか!?」
 「何で、てレイもネルフ学園に行くからさ。」
 「綾波にも通知書が!?」
 どうやらシンジはレイがネルフ学園を希望していたことを知らなかったらしい。
 「いや、レイは一般試験で行くんだ。」
 まだ試験すら受けてないじゃないですか、とごねるシンジに加持はさっさと行ってこいと促した。
 「綾波の実力はお前が一番分かってるんだろ?」
 シンジはそれでも不満があるのか口を尖らしている。
 「ま、同じ行くにしたって心持は前向きな方が良いに決まってるじゃないか。」
 「う・・・ケド、なんで綾波を誘う必要があるんですか・・・」
 加持は学校の職員専用駐車場へ向って歩き出した。
 「合格祝いに決まってるだろう?」
 その言葉に唖然として突っ立っているシンジに幾度目かの催促をして、彼はその場を去って行った。
 最悪な日だ。
 今すぐ逃げ出してしまいたい位に・・・・・
 
桜坂 新たなる日々
 
入学式とあって、学園へと続く一本の上り坂は新入生でごった返していた。新品の制服に新品の鞄。エリート高校である学園の校章が刻印されているそれらを携えて、彼らはどこか誇らしげに学園へと向かっている。
 気持ちの良い晴天の下、坂の両脇に連なって咲き誇る桜の木と春風の祝福を受けながら彼らは盛大な門構えをくぐっていく。
 そんな中に浮かない顔をして溜息をつく少年が居た。物憂げに学園の正門を見上げる。彼の両脇を他の新入生達が賑わいながら通り過ぎていく。
 全てのものが嫌になる。
 溢れかえる人混み、むせ返りそうなぐらいに強く香る桜の匂い・・・・・・
 全てのものが不愉快だ。
 少年は乳白色の大理石で造られた正門を見上げる。今すぐにでも引き返してしまいたい衝動に駆られる。
 「おはよう、碇君。」
 少年は弾かれたように後ろを振り返った。水色の髪に、緋色の目をした少女が佇んでいた。
 「お早う、綾波。今来たんだ・・・・」
 碇と呼ばれた少年は改めて向き直って挨拶をした。
 「早く、入らないの?」
 碇はその言葉にもう一度正門を見上げた。
 「うん・・・・その、色々考えてて・・・・・」
 綾波も正門を見上げる。
 「まだ、お父さんのこと考えてるの・・・・?」
 碇は静かに頷いた。数ヶ月前に届いた父親からの手紙・・・・・
 「こんなの・・・・勝手すぎる」
 ぎり、と拳を握りしめる。正門から覗く広大な学園が自分を呑み込むかのように待ち受けているような気がした。
 綾波は視線を碇に戻すと、白くなるほどに握りしめられていた拳をそっとほどいた。
 「行きましょう・・・時間がないわ」
 綾波はそのまま碇の手をそっと引いた。正門の前には二人きりだった。
 半ば綾波に引かれるように、二人で正門をくぐる。
 少しだけ気分が楽になったような気がした・・・・・
 エヴァの学園ものシリーズです。チルドレン達のやりとり中心になるかも・・・。シンジは綾波よりです。本当にカヲルの強引な?一歩通行ですのでそこら辺ご了承ください。それでは大まかな設定へ・・・・

■碇シンジ
 他人との極端な接触をあまり好まない少年。目立つことも当然いやがる。自分を取り巻く三人組とは割かしうち解けているが、その分自分にコンプレックスを抱いている(みんな美形だから・・・・)。甘いもの大好き。

■渚カヲル
 急遽転校してきたハーフの学生。美少年。否応なしにシンジをつけ回す。ぶっちゃけシンジ以外は興味がない。クラスでもモテモテ。天然なのか、ただ単に馬鹿なのか、頭はいいのかわからない思わせぶりな態度をとる。

■綾波レイ
 ミステリアスな美少女。四人組の中で一番大人しい(・・・・・と思う)。もの静かな態度で人と接する。なんだかんだいってアスカと一位二位を争うかの人気ぶり。

■惣流・アスカ・ラングレー
 (性格以外は)パーフェクト美少女。激しい性格の持ち主。シンジには何かと厳しい態度をとる。目立ちたがり屋。猫の皮を何枚もかぶっては使い分けている。綾波にもめざとくうるさい。カヲルは彼女の中では理解できないものの一つらしい。シンジとは幼馴染で高校で再会。

■加持リョウジ
 シンジが通っていた中学の教師。体育専門。シンジの相談相手。高校になっても時々会うかも・・・・・
 
 こんな感じでお願いします。
 まぁ、ある種のシンジ総受けだと思ってくだされば良いので・・・・・。家族構成は、碇シンジ育成計画(マンガ)とほぼ同じということでお願いします。ただし、母親は亡くなっております。しかも年代が高校です;